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雑学&教養博士 雑学&教養 (頭のマッサージ)
【No.11】2008.8.26更新
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【人間は本当に進歩したのか】

どんどん異常に、そして残虐になっているのではないか懸念すべき、世界情勢になっているのではないか。異常な犯罪、猟奇的な事件が多すぎる。

人間は狩猟採集生活をしていた先史時代(文字で書かれた歴史以前の時代:prehistory era)から考えても、進化論的にはあまり変化していないらしい。10年以上前にアメリカの農務省関係の仕事をしていたが、ワシントンの本部に人類の祖先は間違いなくクロマニオン人であったことを確信させる風貌を持つ人物がいた。欧米人にはこの手の顔をした奴は珍しくない。クロマニオンの彼を東京のディスコの類につれて行ったところ、この人物の踊る姿は大勢のギャラリーの熱い注目を浴びた。顔ばかりでなく、姿勢、動き、リズムまでクロマニオンはかくあったであろうことを彷彿とさせ感動的ですらあった。そして本人は時代の先端を行くダンスを踊っているつもりなのである。これは何も彼を貶めようとする議論ではない。人間は進歩(変化)していないのである。

人間は狩猟を止め農耕を始めたことにより、多くを失い堕落した。狩猟時代の人類は戦略的思考と決断力に優れていたと想像されている。人類学者であるシェファードによれば、人間の肉体と精神は狩猟時代のものと進化論的な意味ではほとんど変化していないので、現代人が精神と肉体の健康を保とうとするなら、狩猟時代の人間の生活パターンを踏襲するのが最も良いと言うことである。

狩猟で食糧を確保し続けるには、戦略的思考と戦術的能力の両方を必要とする。狩猟の対象となる野生の動物群は有限な資源である。食い尽くすわけにはいかない。資源保全の観点から狩猟計画を立てなければならない。そのためには時間をかけた観察による個体識別が必須である。群のアルファーメール(ボス♂)や妊娠中のメスを食うわけにはいかない。また若メスもポピュレーションの維持のためには食ってはならない個体である。観察される動物群のほうもたまったものではない。群れの将来の繁栄のために必要ないと認定されると狙い撃ちされるのである。人間がこのように取って食われる宿命を担わされた動物群ではなくてつくづく良かった。筆者のように繁殖能力を期待されず、用心棒にもならない♂は真っ先に食われる。同じように繁殖能力を失ってもメスであれば赤ん坊の育成係りとしてまだ評価される可能性を残している。

狩猟民族は次の狩りの前に食ってもよい個体と、絶対食ってはならない個体の識別に5日間かける。小高い丘の上にポジションをとりリーダーの方針により手分けをして綿密に個体識別をする。次の狩猟でターゲットとする個体と食ってもよい頭数を決定する。これは勝れて戦略的思考を要する作業なのである。戦略が決まれば次はその個体をゲットする狩猟戦術の立案が仕事になる。適切な罠の選択と作製、その罠に追い込むためのルートの設定、追い込む勢子となるチームの選抜、確実に罠に落とすための待ち伏せチームの選抜、間違いなく特定された個体が狩猟の対象になっているかを認定する役目を果たす狩猟リーダーの元での命令系統の作成などが戦術の重要部分である。この戦術の決定に彼らは一日を使う。

ここまでは頭を使う作業であるが、いよいよ作戦実行の日は、肉体と決断力が物を言う場面になる。動物群から巧みに狩猟対象となる個体を分離する作業は持久走の能力を必要とする。マラソンランナーがリーダーの指示のもとにチームワークで作戦を敢行するのである。この持久走は3〜4時間のコースとなる。そして最終的にはダッシュ力が必要となる。確実に一気に罠に落としこむ瞬発力である。すなわち狩猟実行の日には持久走と短距離走の両方が必要なのである。この実行日に最も重要なことは、動物群が計画に想定されていない予測に反する行動に出たときの対応である。すなわち決断力である。環境が変わったときに計画のシナリオに拘るのが、失敗のおおきな原因である。ここではリーダーの力量が事の成否を大きく左右する。状況の変化に応じて用意された第二、第三の選択肢のなかから最も有効なものを選択する。そして如何に素早く作戦の変更をチーム全体に浸透させるかがリーダーの力量なのである。

このように狩猟民族は現代社会のビジネスや戦争でもっとも必要される戦略的思考、戦術的思考、状況の変化に対応する決断力、リーダーシップを備えていたのである。現代人間が精神と肉体の健康を保つために狩猟民族の生活パターンを踏襲するという意味は何であるか。簡単な話である。一週間のうち5〜6日は戦略、戦術で頭を目一杯使う。週末には持久力を養う運動をする。そのうち少なくとも30分は心拍数と呼吸数が亢進するくらいの激しいダッシュを伴う運動をする。決断力と創造力とチームワークを必要とするスポーツがよいということだ。サッカーで世界中が熱狂するのはここに理由がある。サッカーで人類は狩猟生活の血が騒ぐのである。ちなみに野球は駄目だ。キャッチャーのサインにピッチャーが3回も4回もイヤイヤなんかするようなふやけた真似をしていたら、確実に獲物に逃げられる。

農耕を始めて何故人間が堕落したかについてはいずれ論じようと思う。
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